見えるモノ見えないモノ
第24話
喫茶店ダ・ヴィンチが見えてくると、自然と足が止まった。
息を整えながらゆっくりと近づく。
このまま取りに行かないという選択肢もある。
迷っている私の頭に、ポツリと水が落ちてきた。
上を向くと空に灰色の雲が広がっている。
ポツリポツリと勢いを増していく雨に背を押されるように喫茶店に入った。
カランカラン――
入ってすぐにカウンターを見ると、女性の姿も私のスケッチブックも無かった。
もしかして道で落としたとか?
それにしても、やけに喫茶店の中が静かだ。
BGMもかからずお客も誰もいない。強さをました雨と雷の音だけが聞こえる。
なにより、入ると聞こえてくるマスターさんの声も姿もない。
不思議に思いながら、早くスケッチブックを取り戻したくて奥に進む。
カウンターの奥に座っているマスターさんを見つけた。
カップを口につけながら、私のスケッチブックをめくって見ていた。
「駄目! 見ないで!」
咄嗟に声を上げると、はじかれたようにマスターさんが顔を上げた。
それと同時に窓を震わす大きな音が響いたかと思うと、電気が消えた。
「わっ!!」
「そのまま動かないで」
マスターさんの声にその場で動きを止めた。
取り敢えずはスケッチブックがこれ以上見られないことに安堵した。
後はまだマスターさんの似顔絵が見られていないのを願うばかり。
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