第10話
広い庭に洋風な建物。その隣に、なんともミスマッチな古い和風の蔵が建っている。
庭伝いに隣の洋館と繋がってはいるが入口の門は別々。
見た目から違う。
豪華な門と木で出来た古い門。私は古い門を開けて、蔵に向かった。
「おはよう!」
少し開いている重い蔵の扉を開けて声をかける。
蔵の中はリフォームされて、かなり快適な空間になっている。
電気水道完備され広さも十分。中二階もあり、私の住んでいるアパートより綺麗かもしれない。
「おはよう」
「お~」
隣のお屋敷の一人娘。蔵の主でもあり、私の友人レイコ。
中二階から声だけ聞こえるのはナオヤ二人共、同級生。
三人とも油絵専攻でほとんどいつも一緒に行動していることが多い。
ナオヤと夏休みに自分の部屋で作品を描くのはテレピン油の匂いで辛いと話していたら、レイコがこの蔵をアトリエとして使わせてくれることになったのだ。
「ナオヤはまた泊まり?」
「晩御飯とさっき朝食まで一緒に食べたわよ」
眉間に皺を寄せて中二階のソファーで寝ているナオヤを睨んでいる。私も苦笑い。
けど、レイコは少し嬉しそうなんだよね。前にナオヤを好きなんだってこっそり教えてくれた。
私はリュックをポールハンガーに掛けて帽子を脱ぐ前に手を止めた。そして、レイコの方に向き直る。
「ねえ、今日の私の服装どうかな?」
レイコはさっきよりも眉間に皺を寄せて唸ってる。
「虫取り網に虫かごがあれば完璧だな」
上から声が降ってくる。中二階にあるソファーから顔をひょっこり出したナオヤが笑っていた。
レイコも口を隠して笑ってる。今度は私が眉間に皺を寄せる。
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