第11話
「なにそれ? 可愛いの? 変なの?」
「う~ん変ではないけど……可愛い?」
レイコは困ったように歯切れの悪い返事。
どっちなんだろう?困っているってことは変なのかも。
「虫取り少年を連想させる」
自分でも思ったけど、人に言われるとやっぱり少しはショックかも。
しかも虫取り少年て、それは言い過ぎじゃない?
「元気な感じよね!」
これ以上レイコを困らせるのは悪い。
お礼を言って少しがっかりした自分を知られないように麦わら帽子を脱いでポールハンガーに掛けた。
一度着替えてから喫茶店にタオルを返しに行ったほうがいいかな?
今までお洒落に頓着してこなかったことに溜め息が溢れる。
「急にどうしたの? 今日なにかあるの? まさかデートとか?」
「違うけど、人に会いに行くって言うか……届け物」
「えっ! それ男?」
レイコは大きな丸い目をさらに見開いて私の肩を揺する。
私がゆっくりと頷くと、ガタッと音がしてナオヤがソファーから転がり落ちた。
「どこの人よ! 告白したの?」
「喫茶店のマスターさん。けど、そういうのじゃないよ!」
「ついに恋をしたか……」
「違うってば!!」
自慢じゃないけど、生まれてから一度も恋愛経験がない。
二人にそれを話したときは、かなり吃驚していたのを覚えてる。
それからもずっと恋愛のレの字もない私に、男と聞けば興奮するのは無理もないのかも。
でも、驚きすぎじゃない?
「どこの喫茶店? どんな奴なの? 変な男じゃないでしょうね」
「兄ちゃんと姉ちゃんが審査してやる」
階段を下りて来たナオヤが乱暴に頭を撫でる。
二人とは同い年だけど、完璧に手のかかる妹とか弟みたいに思われてるよね。
「そうだ、顔ならこんな感じだよ」
スケッチブックを広げて昨日、描いたマスターさんを見せた。
「「あっ!!」」
二人は声を合わせて驚きの声を上げると渋い顔をした。
知っている人なのかな?
二人の反応に首をかしげていると、ナオヤが口を開いた。
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