第46話
「この店のことは秘密にしてくださいと言ったのに」
完璧な容姿を持つシュトリの姿に真一は息を飲み、見入ってしまう。
話すことも忘れ見入る真一を無視して、瑠衣がシュトリにすがるように謝罪しはじめた。
「ごめんなさい! あの……勝手に付いて来ちゃったんです。待っていてと言ったのに!」
勝手に追いかけてきた真一が悪くて自分は悪くないと必死に訴えるが、シュトリの不機嫌そうな顔は戻らない。
瑠衣は血走った目で真一を睨みつけ、お前のせいだと怒りをぶつける。
「あっ、もう集まってたのね! シュトリ、そっちの男は私の客なの」
突然、背後から現れた誰もが綺麗だと答える美貌を持たオセに真一は妙な緊張感に額から汗を流す。
――こいつら何者?
本能が逃げろと警報を鳴らしている気がして、真一は瑠衣の手を無理やり引いて店を出ようとする。
「あら? もう遅いわよ」
瑠衣を掴む真一の腕をオセが捕まえると、ボキリと嫌な音と真一の叫び声が店に響き渡った。
「なっ、腕が……折れて……」
「チッ、やっぱりお前が関わっていたんだな。うるさいのは嫌いなんだ。早く片付けろ」
叫び声とうずくまり腕を抑える真一の姿に正気を取り戻したのか、瑠衣が真一に寄り添う。
「大丈夫?! なんでこんなこと……小瀬さんがどうして?」
「私ね人の悲鳴を聞くのが大好きなの。今日は趣向を変えて悲鳴を上げてもらおうと頑張ったのよ」
到底、瑠衣には訳の分からないオセの答えに恐怖と困惑しかない。
助けを求めるようにシュトリの方を向くと、しゃがんでいる瑠衣の首根っこを乱暴に掴み軽々と持ち上げる。
「なっ、なにするの!?」
「それじゃ、俺は一人で作業する」
「駄目よ! 二人一緒にやらないと意味ないの!」
睨み合う美貌の二人と顔を歪め恐怖を滲ませる二人の人間。
自分の予定をずいぶんと狂わされているシュトリが先に視線を外し、暴れる瑠衣をつれそのまま奥の部屋へ向かう。
それを了承と取ったオセは床で折れた腕の痛みを我慢しながら連れ去られる瑠衣を必死に助けようとする真一の腹を蹴り飛ばし仰向けにする。
「精々、良い声で鳴きなさい」
床に転がり顔を歪め咳き込む真一の髪の毛を掴む。抵抗するように叫ぶ真一を引きずってシュトリが向かった部屋に入った。
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