第35話

オセは昔、シュトリの工程を疎んじて痩せる時間を短縮させたことがあった。



 その時は体の変化に精神がついていかずシュトリの育てていたものを傷つけて亡くなったのだ。




――何年も前のことをいつまでもネチネチと嫌な奴




「今のところ傷もないようだしこれ以上、昔のことをネチネチと俺だって言いたくない」




 シュトリは虚ろな目をしたまま顔を上気させている瑠衣を見て、愛おしそうに胸を舐め上げる。



 身震いする瑠衣の姿にオセは益々うんざりした様子でシュトリを冷たく睨む。




「変態。いい加減にしないとその子、風邪引くわよ」



「言われるまでもない。今日の肉を食わせて早々に帰ってもらう」




 そう言って瑠衣の胸からシュトリが顔を離すと裂けたブラウスは元通りに直っていた。




「もう話は済んだ。消えろ」




 猫でも追い払うようオセに手を振りカウンターに入り包丁を構える。



 瑠衣は虚ろな目をしたままオセの存在にさえ気付いていない。



 誰にも構うことなくシュトリが包丁を振るうと瑠衣の体がビクリと跳ね上がった。

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