第31話

「まあね。それより三日後は俺、定時で帰るからよろしく」



「マジかよ?! 俺だって手伝えるほど余裕ねえよ」



「あらかた片づけるけど、メールとか急なやつは頼むわ」



「なんか奢れよな」




 同僚が渋々といった様子で了承してくれたことに「飲みにつれてく」と約束をすると煙草を消して、仕事を片づけに喫煙室を出る。




――会ってみなきゃ、良いか悪いかなんて分かんないけどな




 深く息を吐いて自分のデスクに戻り、山積みの仕事を片づけていく。



 実際、瑠衣の忙しさに負けず劣らず真一も忙しい。ただ、会いたいという自分の我儘に瑠衣をつき合わせているので言わないだけ。



 毎日の残業だとて瑠衣に会える時間を作るためだと思えば苦にならない。




――誕生日プレゼント喜ぶといいな




 プレゼントを買に行った日は結局、居酒屋店員の女の子に店まで案内してもらった。



 店に着くと散々、真一を誘惑するように体を寄せていた女の子はあっさりと去って行った。



 だが、案内された店は瑠衣の好きそうなアクセサリーが並び、いいものを買えたと満足している。




「楽しみは仕事の後あと……」




 パソコンに向かい瑠衣と会えることをモチベーションに、意気こんで仕事に取り掛かった。




「こっちは順調。彼女のほうではもう少し遊べるかしらね?」




 壁の影から爛々と光る目が真一の姿を見据え囁く。その目が細くなり影に消えるとクスクスと笑う声だけが残された。

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