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第29話
不機嫌なシュトリが料理をだし、それを瑠衣が食べ終わると店から追い立てるように帰宅させる。
シュトリは扉を閉めると眼を金色に光らせカウンターでまだワインを飲んでいるオセを睨みつけた。
「どういうつもりだ?」
「別に~私も忙しくなるから帰るわ」
「お前も一枚噛んでいるんだろう? がさつなお前に一つ貸しを作ってやる」
「なに言ってんのよ! 私がシュトリにどれだけ貸しを作ってるか分かってる? それに、私は普通でシュトリが神経質なのよ」
「フンッ、がさつなお前に分かってもらおうなんて最初から期待してない。だから何度も邪魔だけはするなと言っているんだ」
シュトリは先ほどまで瑠衣が使っていたグラスにワインを注ぎ香りを確かめるように揺らす。
「じっくりと寝かせ余分なものを取り除き香りを楽しみ最高の物を味わう……オセには情緒がたりない」
「あっそ! 私なりにその情緒ってやつを楽しんでるわよ」
最初からお互いに理解しようなどという気持ちは微塵も持ち合わせていない。
シュトリの話が説教に変わる前に言いたいことだけ言って去るのが最良の選択。
オセは立ち上がり手をヒラヒラと振りながら店の扉とは真逆の暖炉脇に向かい、深い闇の中に溶け込み消えた。
「フンッ、相変わらず勝手な奴だ! チッ、ワイングラスに口紅を残しやがって……」
自分のワイングラスとオセが使っていたグラスの脚を片手に掴むと苛立ったように暖炉の炎に投げ入れる。
暖炉の炎が大きく燃え上がるとワイングラスを一瞬で溶かし組まれた薪が崩れた音が店内に響いた。
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