第26話

「こんにちは」




 店の扉を開けると客の姿も店主であるシュトリも見当たらず、不気味な雰囲気が店内を埋めている。



 暖炉に火が入っているので奥に居るのだろうと気にせずに入り、外の寒さに冷たくなった手を暖炉にかざして温めていると、突然声を掛けられ飛び上がりそうになる。




――気配なく近づくの止めてよね




 驚きをかくして振り返り挨拶をすると、完璧な笑顔を作りシュトリが佇んでいた。




「オセから連絡をもらいました。何か予定の事で相談があるとか」



「相談もそうなんですけど、その前に料金のことをはっきりさせておきたくて」



「あぁ、それなら一週間で一万円ほどなら払えるでしょう? はっきりしましたし、もういいですね。座ってください」




 シュトリは背を向けて話は終わりだとカウンターの中に入って行く。取り敢えず瑠衣もコートを脱いで椅子に座る。




――お金のことは大丈夫として、相談はどうしよう




 どう切り出せばいいか迷っていると、暖炉の薪が爆ぜる音と一緒に聞きなれた声が聞こえる。




「予定の方はどうなったかしら?」




 気配がなく突然現れた小瀬にシュトリの綺麗な顔が歪み、瑠衣は驚きに目を丸くしていた。



 だが、すぐに話を切り出すタイミングをくれたのだと思い瑠衣が口を開く。

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