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第23話

一晩寝たぐらいでは憂鬱な気分は晴れない。だからと言って会社を休むことは出来ないので普段通りに出勤した。



 会社の更衣室でコートを脱いでいると、小瀬に声を掛けられる。




「おはようございます。あれ? 太田井さん少し痩せました?」



「おはようございます。分かりますか?! 昨日、小瀬さんに教えて貰ったお店に行ったんです」



「フフッ、効果抜群でしょう?」



「ええ、本当に。怖いぐらい」




 お腹のあたりを擦りながら話す瑠衣を小瀬は目を細めて見つめる。




「今日もDerwezeに行くんでしょう?」



「はい。ちょっとシュトリさんに相談したいことがあって……」



「相談? シュトリに何を?」




 驚きに細めていた目が、カッと開かれ瑠衣の瞳を覗き込むように顔を近づける。



 瑠衣は目前に迫った整い過ぎた顔にたじろぎながら、更衣室に誰もいないことを確認して小声で話す。




「痩せるペースって上げられるかなって思って」




 よほど意外な内容だったのか小瀬は目を丸くして、少し間を開けて口元を抑えて後ろを向く。




――人間の欲深さって底なしなのかしら




 体を震わせ喉から不意にゴロゴロと音が出てしまい、慌てて笑いを止め瑠衣の方に向きなおす。




「たぶん大丈夫じゃないかしら?」



「でも、一箇所ずつと言っていたし効果が大きいので体の負担も大丈夫か不安で」



「体への負担は大丈夫。ただ、シュトリが納得するか……神経質なのよね。私からも連絡して頼んでおくわ」




 それだけ話すと小瀬はヒラヒラと手を振って更衣室から出て行ってしまう。



 残された瑠衣もホッと息を吐いて身支度を整えてオフィスに向かった。

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