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第19話
カウンター奥の影から男の絶叫と共に黒く大きな豹が姿を現し、ゴロゴロと喉を鳴らしてシュトリのもとへやって来る。
「うるさい! あの豚の悲鳴を止めてこいオセ!」
ご機嫌な黒ヒョウを睨みつけ苛立ったように怒鳴ると、ゴロゴロと鳴っていた喉から言葉が紡がれる。
「良いでしょう? 命の絶叫はいつ聞いても興奮しちゃう!」
「あんな下品なもので興奮なんて安いなお前は」
シュトリが鼻で笑うと黒ヒョウは二本足で立ち上がり、女性の姿へと変え不機嫌な表情をさらす。
暗い店内に向き合う美男美女。暖炉の炎が照らされるだけで妖艶な雰囲気が流れる。
「そう言うシュトリだって結構な趣味じゃない。それに、もう少しで止まるわ……ほら、もう消える」
オセは自分が現れた暗闇に視線をやり悲しそうな表情を浮かべていた。
「壊れた玩具はさっさと片付けろ」
「あら、それならあそこに並ぶシュトリのガラクタも一緒に片付けてあげましょうか?」
クスクスと馬鹿にしたように笑うオセをシュトリが睨むと笑いが止まる。
シュトリの瞳は金色になり黒目が細く絞られていく。薄暗い店内が地震でも起きたように震えだす。
「俺のコレクションに触れたら暖炉の火にくべるぞ」
冷たい声音にオセの顔が引きつり一歩下がると、二人を照らす暖炉の炎が空きっ腹の獣が餌を強請るように燃え盛る。
「ちょっ、冗談よ! あんな気持ち悪いもの触らないわよ!」
精一杯の虚勢を張って冗談だとシュトリに伝えると、店の振動が止まり静かな空間に戻った。
金色の瞳は無言のままオセを捕らえ怒りをぶつけている。
――本当に冗談が通じないんだから!嫌になっちゃう
オセは降参とばかりに自分が現れた暗闇に踵を返して歩いて行く。
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