第12話

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」



「大丈夫。それより奇遇だね」



「いつもこの辺りで買い物してるんです。もしかして彼女さんにプレゼント買うのに、教えたお店探してます?」




 可愛らしく口元に手を当てて笑う女店員に真一は頭を掻きながら苦笑いをする。



 仲直りするのにプレゼントを早く手に入れたい。ここから道順を聞いても、目的の店には辿り着けそうにない。




――迷子ですって言ったら連れて行ってくれないかな?




 そんな真一の心を読んだように女店員が店まで案内を買って出てくれた。




「たぶん、一人じゃ見つからないと思いますよ。私について来てください」




 くるりと踵を返し真一を呼ぶ女店員が、レンガの隙間にヒールが嵌りよろめく。



 咄嗟に真一は後ろから倒れそうになる女店員を抱きしめるように支えた。




「危ない! 大丈夫?」



「怖かった……転ばなくてよかった。支えてくれてありがとうございます」




 自分の体を支える真一の腕をギュッと握り顔を赤らめ、上目使いで笑顔を見せる。



 意識などしていないが可愛らしい女の子がそんな表情を見せれば、変に意識してしまう。




「ご、ごめんね。別に体を触ろうとかやましいことは考えてない……咄嗟に……」




 慌てて支えていた腕を放して謝ると、女店員はその腕を捕まえる。




「やましくてもいいですよ?」



「えっ、冗談?! からかわないでよ」



「フフッ、溝にはまったヒールを取るんでもう少しだけ腕貸してください」




 移動して正面から両腕を貸すが、真一が屈んでヒールを溝から外せば早い気がして「俺が取るよ」と腕の支えを緩める。



 動作が速かったのか女店員は体勢を崩し、真一の胸に飛び込む様に抱きつく。




「ごめんなさい! 足にちょっと力を入れれば取れますから」



「こっちこそゴメン」




 事故で他意などないが男の性なのだろう。柔らかい体の感触に真一の鼻の下は伸びていた。

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