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第10話

「はぁぁ。やっちまったな……怒らせるつもりは無かったんだけどな」




 パンツ一枚だけを身に着け、ベッドで一人頭を抱え携帯電話を前に呟く。



 付き合いの長い瑠衣が怒った時に聞く耳を持たないのは今までの経験から学んだこと。




――追いかけたところで殴られそうだし、電話したって出ないよな。




 見える結果に真一はベッドで一人頭を抱え溜息をつく。




「あぁ……もうわかんねえ!!」




 瑠衣が出て行ってからずっと考えても何も今の状況を変える策など浮かんでこない。



 時間だけが過ぎてカーテンの隙間からは日が差し込みだし深く息を吐いてベッドに寝転んだ。




――正直に話すべきか?




 なんでもないようなフリをしていたが、飲み屋でナンパしていると疑われた時点で瑠衣の機嫌は悪かった。



 実際は近づく瑠衣の誕生日プレゼントを何にするか参考までに店員に聞き、いい店を教えて貰ったので場所をメールで送ってもらおうとしていただけ。




「たまに会えれば嬉しくなって欲望に耐えられないとか十代のガキか俺は……」




 普段の我慢が瑠衣と合った瞬間に欲望に変わり、体が繋がっている間だけは瑠衣の全てを支配し手に入れた気分になる。



 相手の気持ちがそこになければ意味がないのは真一にも分かっていたが、受け入れられてしまう己の欲望に理性はあっけなく消え去ってしまう。




「瑠衣が嫌がって怒ってくれればいいのに……もう怒らせてるか……駄目だ俺」




 自嘲的な乾いた笑いをこぼし、ベッドから起き上がり頭を振る。




「シャワー浴びてすっきりしたら瑠衣のプレゼント探しに行って謝ってちゃんと話をしよう!」




 床に散らばる脱ぎ捨てられた服を拾いながら風呂場に向かった。

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