第4話

「大丈夫? 君、ずっと病気で休んでた子だよね」



「えっ? ゴホッ、埃を吸い込んじゃって」





 知らない男の子が心配顔で廊下から教室を覗き込み声を掛けてきた。



 男子とはあまり話さないのでまだ顔と名前が曖昧で確信はないけど、たぶんクラスメイトではない。



 その男の子は隣に歩み寄り、まだ箒の下に置いたままになっていたジャージのズボンを見て悲しそうな顔を見せる。





「これじゃ着れないね。ちょっと待ってて」





 返事をする間もなく男の子は教室を飛び出していった。



 何だろう? 首を傾げながら箒の下からズボンを助け出して埃を払う。



 着られないことはないけど、埃まみれのジャージを着るのはちょっと嫌かも。





「これ、良かったら使って! 僕まだ着てないから」





 先ほどの男の子がジャージを持って戻って来た。

 親切にしてもらってるんだけど、名前も知らない男子にジャージを借りて着るのも抵抗がある。



 私がどうしたものかと考え渋っていると、授業再開のチャイムが鳴った。





「使い終わったら隣のB組に持って来てくれればいいからさ!」



「あの、ちょっと! 名前!」





 ジャージを無理やり押し付けて去っていく男の子に慌てて尋ねる。





「村田 大志[ムラタ タイシ]早く行かないと遅刻するよ!」





 呆気にとられたまま手渡されたジャージを見る。

 埃まみれだし折角の好意に甘えることにしようかな。



 私は汚れたジャージを手早く片付けて借りたジャージを手に更衣室に急いだ。

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