第76話

感情が溢れ出るように次々と願望がわいてくる自分に驚きを隠せない。


――やりたいこと沢山あるじゃない。


 死ぬ間際に浮かんでもやっぱり今までと変わらず叶わない思いなど後悔にもならず、すぐに消えてしまだろうと感情を殺す。



『病は気からと言うでしょう? 希望を持って待ちましょう』



 病気の話をされた時に、医者にとりあえずは現状維持で頑張りましょう。ただ、次に大きな発作がおきたときは覚悟して下さいと言われた日を思い出す。


 発作は明日なのか一ヶ月後か、それとも十年後、数分後。希望を抱き直ぐに死ぬかもしれない覚悟をして待ち続ける。


――耐えられない。だったら何も考えないほうがいい、考えてはいけないのだ。


 病気の事を知った時はショックだったが、それ以上に両親はショックを受けて泣いていた。


 私の病気のせいで家族が離れて暮らさなくてはならなくなってしまったし、母親の自由さえも奪っている。


 勉強を頑張って入学した高校だって行けずに家で一人、楽しく会話することもなく学校に戻れるかも分からず勉強する日々。


 何もできず迷惑ばかりで、生きている意味も分からず、せめて聞き分けよくいい子で過ごすことで自分の価値を保つしかない。


 だからいつも笑顔で我侭を言わず聞き分けよく感情を殺してなんとか生きてきた。

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