誰のせい?
第75話
――私ついに死んじゃうのかな? せっかく烏の友達ができたのにな。それもただの烏じゃなくて、烏天狗になるって夢をもったすごい烏。
「移植が……待つしか……」
「どうか……助け……します!」
薄い意識のなかすぐそばで、深刻そうに話す担当医と涙が混じったような声で懇願する母親の声が聞こえる。
またも烏と話している途中に発作を起こして運ばれ、病院のベッドに寝かされていることに小さく溜息を吐くが私に誰も気付かない。
聞こえてくる話し声はまるで人ごとのようで、悲しいとも怖いとも感じず現実から切り離された遠くで見聞きしているようだった。
――いよいよ駄目っぽいかも。
ぼんやりとしている意識のなかでただ一つだけ死期が近いことだけが、はっきりと脳裏に浮かび走馬灯のように、小さな子どもの頃からの記憶が脳裏に再生されていく。
現在の年齢に段々と近付いていく自分の姿と真っ黒な烏の姿が現れ無意識に口元がゆるむ。
――カラスさんが烏天狗になった姿を見たかったな。意地悪をする師匠の右京さんにも会ってみたい。あと、烏と約束した初めての食事はどんな服を着て何を食べに行こうかな? その時はカラスさんが迷子にならないように手を繋いだほうがいいかな? きっと烏天狗になった姿は格好いいだろうから緊張しちゃいそうだな。
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