第72話
「離れてろ……」
俺に注意を促した後、薬壺に手をかざして右京が呪文を唱えはじめると同時に周りの空気が震え出したのを感じ、慌てて近くの岩影に隠れた。
周囲に電気が走っているようなバチバチという音がそこら中から聞こえる。
右京の周りに砂埃が舞いだしたかと思うと一気に風が渦を巻いて立ち上がった。
「す、凄い……」
渦の中心に集まっていく力に地面が揺れ天狗の山の木々から鳥が飛び立つのが見え圧倒的な右京の力を目の当たりにして俺は知らぬ間に尻餅を付いていた。
立ち上がっていた風の渦が徐々に消えて砂埃が舞うなかに右京の背中が見える。
慌てて立ち上り岩影から出て恐る恐る右京に近付いていくと仰向けに倒れてきた。
「でっ、出来たよ……」
額に汗粒を浮かべ疲れきった様子の右京を俺は初めて見た気がして、感謝と嬉しさに右京の顔に擦り寄る。
「ありがとう……本当にありがとう」
「暑苦しい。師匠の偉大さがわかっただろう? あぁ、久々に疲れた酒が飲みたい」
右京は体を起こし何度も涙目で頷いている俺の頭をカラカラと笑って撫でる。
いつも、ぐうたらして駄目な奴だと思っていたが腐ってもやっぱり俺の師匠。
心の中で何度も謝り反省していると、俺の頭を撫でていた右京の手が止まり顔を歪める。
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