第71話

「そうそう、小陽ちゃんが倒れた理由……病が最期の抵抗をしているせいだろうね」


「最期の抵抗?」 



 俺の寝床と右京がいつもごろ寝している杉の木から離れた、少し拓けた場所で右京は足を止めて薬壺を置く。



「病も毎日、吸い取られ小さくなる自分に危険を感じたのさ。いまから造る薬も病を弱らせ追い出し易くするもので万能薬ではない。さっきも言ったが最後は飲んだ本人が生きたいと強い意志でもって戦わなけりゃ生きられない」


「小陽なら大丈夫だ!」



 内心、倒れる前の小陽との会話では生きることに前向きだとはとても思えなくてすこし不安な部分もある。

 

 勝手で無責任だと思うが、俺に出来ることは薬を造ってもらい小陽に飲ませ病との戦いに勝つと信じることだけだ。


 右京は薬壺の前に胡座をかいて座ると背中に生えている真っ黒な翼を、ばっと広げゆっくりと息を吐きながら広げた翼を閉じていく。


 先程と同じように肌がチリチリとするような緊張感が場に広がり、いままでに見たことのない右京の集中している姿に目を奪われる。

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