第69話
後悔していても仕方がないし、いまはなんとしても薬を造ってもらい小陽に飲ませて信じるしか助ける方法が見つからない。
――俺が気持ちを揺らして気圧されて引くわけにはいかない! やれることもやらないなんて烏がすたる。
恐怖にがくがくと体が震え全身の羽根が全て抜け落ちてしまいそうな感覚に耐え、自分を奮い立たせて右京を睨む。
「はぁぁ……生意気で頑固な烏だねぇ。弟子の始末は師匠の務めか」
大げさに溜息をついて右京は俺の頭を小突くように撫でると、張り詰めていた場の空気も普段通りの緩やかなものに戻った。
いつの間にか止めていた息を吐き出すと全身の力が抜け、その場に尻餅をついてまだ震える嘴で話す。
「右京……俺、その……」
「尻餅ついていつまで震えてんだい。偉大な師匠に歯向かって心の底から悪かったて言いたいのかい?」
――偉大までは思ってない。
いつも通りの右京の軽口に震えが和らぎ素直な言葉が出そうになるが、それを飲み込み上下に嘴を大きく振り頷いて見せる。
右京はそんな俺の考えもお見通しだと意地悪く笑いながら睨み、大きな溜息を吐くと薬壺を持って立ち上がり真面目な顔をして俺にもう一度訊く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます