第69話

後悔していても仕方がないし、いまはなんとしても薬を造ってもらい小陽に飲ませて信じるしか助ける方法が見つからない。


――俺が気持ちを揺らして気圧されて引くわけにはいかない! やれることもやらないなんて烏がすたる。


 恐怖にがくがくと体が震え全身の羽根が全て抜け落ちてしまいそうな感覚に耐え、自分を奮い立たせて右京を睨む。



「はぁぁ……生意気で頑固な烏だねぇ。弟子の始末は師匠の務めか」



 大げさに溜息をついて右京は俺の頭を小突くように撫でると、張り詰めていた場の空気も普段通りの緩やかなものに戻った。


 いつの間にか止めていた息を吐き出すと全身の力が抜け、その場に尻餅をついてまだ震える嘴で話す。



「右京……俺、その……」


「尻餅ついていつまで震えてんだい。偉大な師匠に歯向かって心の底から悪かったて言いたいのかい?」



――偉大までは思ってない。


 いつも通りの右京の軽口に震えが和らぎ素直な言葉が出そうになるが、それを飲み込み上下に嘴を大きく振り頷いて見せる。


 右京はそんな俺の考えもお見通しだと意地悪く笑いながら睨み、大きな溜息を吐くと薬壺を持って立ち上がり真面目な顔をして俺にもう一度訊く。

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