第64話
翼を広げ空にとどまり、また寝入る右京に大声で叫ぶと片手を上げてシッシッと振るのが見えた直後に突風に吹き飛ばされる。
――右京の奴、本当に大丈夫だろうな。
天狗の山を覆う霧の先まで飛ばされ古い大木の間に出ると、そのまま体勢を立て直して小陽の元に飛んだ。
今日は少し早いせいか窓が閉まっていたので、ベランダの手摺りに留まって窓をコツコツと嘴で啄いて小陽を呼ぶ。
部屋を覆っている布と一緒に窓が開けられ小陽が顔を出す。
「ごめんねカラスさん……窓開けてなくて。コホッコホッ、おはよう。中にどうぞ……」
「大丈夫か? 具合悪いのか?」
昨日と違って顔色も悪く、部屋に入るとごめんねとベッドに腰をかけ、嫌な咳きをしてなんだかとても苦しそうだ。
――なんでだ?
治ってないにしろ病を二日続けて吸い取っているはずなのに、悪くなるというのはおかしくないか。
「ねえカラスさん。昨日、話した夢のこと……」
俺が心配して机の上で小陽を窺っていると、虚ろな目をして俺の方を向いて話しはじめた。
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