第61話
右京は人間が嫌いなくせに、よく人間の言葉や文化を知っている。
――物知りなんだよな。どこで覚えてくるんだろう?
寝転んでよくミミズが並んだような古い本や巻物を広げて読んでいるので、そこから知識を得ているのかもしれない。
「烏的に言ったら求愛かな。そのあと人は指輪を渡して互いの愛を誓いキスをする儀式をするんだよ」
「知ってるぞ指輪って左手の薬指に着けるんだ。でも、俺は求愛なんてしてない! 小陽の奴が、夢はお嫁さんとか言ってたけで……」
断じて求愛などした覚えはないが小陽も言っていたキスとやらは意味を教えて貰えなかったから、もしかしたらしている可能性がある。
からかう様子もなく静かに酒を口に運んでいる右京に恐る恐るキスとやらの意味を訊いてみる。
「あのさ、小陽もきす? って言ってたけど、なんなんだそれだ?」
「唇を合わせてする接吻のことだよ。お前さん、求愛前にもうしたのかい? いやらしい烏だねぇ」
「ち、違うよ! だって、あれのこと……頬でもそう言うのか?!」
あたふたとして訊くと右京はカラカラと笑いながら頷いてみせる。
やっと小陽に、頬に嘴を当てることをキスなのかと尋ねられた意味が分かり俺は翼で顔を覆った。
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