右京の夢って？

――右京はいつも後ろ向きな意地の悪いことばっかり言うんだよな。

　水を差された気がして嘴を地面に当てて苛立ちをやり過ごす。

少なくとも俺よりはずっと長く生きている右京には、もう夢や願望がなくてそんな風に意地悪く言うのだろうかと首を傾げて訊いてみる。

「なぁ、右京は夢とかしたいことってないの？」

「藪から棒にどうした？　夢ねぇ……そうさね、烏が早く烏天狗にな

りますようにとか？」

　ふざけたように答えるので、もう酔っ払っているのかとじっとり睨みつけると、酒を口に運びながらクスクス笑う。

「真面目に答えろよ」

「真面目にねぇ……俺達の一生はさ、人間なんかよりずっと永い。やりたいことがあれば大体のことは叶えられる力を持っている。だからさ、烏が言う夢とか願望ってやつはほとんど叶え終わったかな……」

　右京は今までに見せたことのない寂しそうな笑顔で遠くを見ながらまた酒を注いだ杯を飲み干した。

　色々出来るようになったら、やりたいことは際限なく続きそうだと思っていたけれど違うのだろうか。

――俺も烏天狗になったら右京の気持ちが分かるのかな？

　寂しそうな右京に、もう一つ思っていたことを訊いてみようと意を決して嘴を開く。

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