休まず帰宅
第56話
今日は休まずに帰らないとまた雨が降ってきそうだ。
病を体に移して運ぶのはかなりの重労働で、昨日の疲労感も抜け切れていない重い体で、いま空を飛べていることに自分でも驚く。
「これで二日目。小陽も元気そうだし……フフッ」
烏天狗になったら小陽とご飯を食べに行く約束したことが今から楽しみで待ち遠しい。
思い出すと嬉しさに辛さも少し和らぎ顔を緩ませながらなんとか雨にも降られず天狗の山に着いた。
右京が大きな番傘をたたんでいる姿を見つけてぶつかるように飛び込んだ。
「おっと、おかえり。今日は早いじゃないか」
避けられるかと思ったが右京がしっかりと俺の体を抱きとめてくれ、気が抜けたのかグラリと視界が揺れ意識が遠のきそうになる。
「はやく……早く出してくれ」
声を振り絞り体に入れてきた小陽の病を吸い出してくれるように、なんとか声を上げて右京に頼む。
持っていた番傘を地面に沈めて片付けてしまうと小脇に抱えた俺に手をかざす。
それと同時に、体から黒い霧が吹き出し右京の手に集められると薬壺の中に投げ入れられた。
――つ、疲れた。
ホッと息を吐くと俺を抱いていた右京の腕がなくなり、地面にべしゃりと潰れたように着地した姿を右京がカラカラと笑う。
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