第53話

「烏天狗になったら人間に化けて、あの白っぽいマヨなんとかってのをお腹いっぱい食べたり、悪戯したり……とにかくなんだって出来るんだ! すごいんだぞ」


「ふふっ、マヨネーズのことかな? それなら烏天狗になったら一緒にご飯を食べに連れて行ってね」


「あぁ、お安い御用だ」



 一生懸命に話す烏の姿はなんだかとても眩しく羨ましく思うが、素直に応援したくなってしまう。


 けれど同時に、なんでも出来るなら私の病気を治してほしいという気持ちもわいたが、その言葉は飲んだ。


 それは出来ないと言われるのと、夢いっぱいに烏天狗になるべく頑張っている烏に水を差すようなことは言いたくなかったから。


 雲の切れ目から日差しが見え隠れし、そのうちに雨が弱くなり青空が広がりはじめた空を見て烏は頷く。



「おっ、雨が上がったな。今のうちに帰るか」


「もう帰っちゃうの? でもまた降ってくると大変だもんね……」


「んっ? そんなに寂しそうな顔しなくても明日も来るから心配するな」



 寂しさが顔にまで出てしまったことが恥ずかしくて熱くなる顔を手で隠し熱が引くまで待つ。


 落ち着きを取り戻して苦笑いを浮かべ烏を見ていると、私の直ぐそばまで跳ねてくる。

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