第50話
「あの、タオルでカラスさんの体を拭いてもいいかな?」
烏は机に体から垂れた水滴で、足元に水溜りを作っているのを見てコクリと頷いて背中を向ける。
その背にゆっくりと広げたタオルで包み込むようにして水気を拭っていると、冷えていると思っていた烏の体はとても温かった。
――鳥の体温って人よりも高いのかな?
黒くて綺麗な羽はよく水を弾くようで見た目よりも水を含んでおらず、めったに触れられない烏にもう少し触れていたい気持ちを我慢して手を止める。
「拭けたよ。まだ濡れてる所ある?」
「もう大丈夫だ」
タオルを取ると烏は体を震わせて羽繕いをはじめたが、頭の上が鶏冠のように逆立っていて、直してあげようとそっと指を伸ばすと烏と目が合う。
黒いつぶらな瞳が可愛くて口元が緩み笑顔を向けると、すぐに横を向いてしまった。
「頭のところ跳ねてるから直してもいい?」
一瞬、烏の動きが止まりゆっくりと私を見上げてから頭を差し出したので指でさっと頭を撫でて直す。
「あ、ありがとう……」
表情こそ読めないが顔を横に向けて、どもりながらお礼をいう烏はなんだか照れているようでこっちまで恥ずかしくなってくる。
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