六羽

雨の二日目

第49話

朝からしとしと嫌な雨が降り出し、空を見ている内に雨脚が強くなってきた。


 昨日は烏から烏天狗になるために修行中などと思わぬ秘密を教えてもらったり、母親の気持ちを聞いたりと興奮と驚きで夜はなかなか眠れなかった。


 今の私にとって烏はやっぱり特別な存在で烏と交わした約束を思い出すだけでも私の気持ちは、太陽に照らされたようにポカポカと暖かくなる。



「雨止まないかな?」


 窓を開けて私の気持ちとは正反対の空を何度も見上げるが、雨のなか飛んでいる鳥など一羽もいない。


 約束はしたけれどこの雨の中を飛んで来るのは大変だろうし、もし今日会えなくても仕方がないかと諦める。


 けれど、雨のなかもしも飛んで来てくれたらびしょ濡れになっているだろうと、心配と期待をしながらタオルを準備していると背中に烏の声が聞こえた。


 案の定、ベランダの手摺に留まっている烏の体は雨に打たれ嘴を伝って水滴がポタポタと垂れている。



「早く部屋に入って!」



 私は慌てて窓を大きく開けて烏を部屋に招く。

そのまま気にせず入ってくれてよかったのに、律儀に烏は体を振るわせ水滴を飛ばしてから部屋の机に飛び移る。



「寒くない? 大丈夫?」



 机で濡れた羽を嘴で整える烏にタオルを差し出してみるが、体を自分で拭くのは難しいだろうことに気付く。

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