第48話
「お互いのことを大切に思いすぎて生じる煩わしさもあるんだよ。恐怖は生きるために必要な本能さ。我侭を言ってもしも見捨てられたら生きていけないだろう?」
「あいつ母親のくせに小陽を見捨てるのか! 俺は見捨てないぞ!」
「いちいち煩い烏だね……もしもの話さ。相手を大切と思えば思うほどに大切にすることが難しくなったり、行き過ぎた優しさで傷つけてしまったり……あんまり分からずむやみに啄きまわると嫌われるよ」
興奮してつい叫んでしまったが、右京は俺を気にしている様子もなく遠くを見ながらなんだか一人で反省でもしているように話す。
首を傾げてそんな右京の様子を見ていると口元にいつもの意地の悪い笑みが戻る。
「ククッ、俺は見捨てないなんて相当入れ込んでるな烏」
「かっ、からかうなよ!」
右京に指摘され、急に恥ずかしくなった俺は逃げるように自分の寝床に飛び上がって戻る。
人間の細かい裏の感情のようなものを読み取るのはまだ俺には難しくて、右京が話してくれたことも半分ぐらいしか分からなかった。
もっと修行を積んで烏天狗になれた時には右京が時折見せる寂しそうな顔の意味も分かるようになるんだろうか。
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