第43話

――あんなにフラフラ飛んでるけど大丈夫かな?


 ベランダに出て烏が飛んでいく姿を心配しながら見えなくなるまで

見送り、先程の烏の行動を思い出し頬に手を当てる。



「あれも何だったのかな? まさかキスのつもりじゃないよね……」



 顔に熱が集まる感覚に、まさか烏もそのせいで様子がおかしくなったのかと両頬を手で挟んで空を見上げる。


――今時の烏って意外と進んでいるのかな?



 頭を振ってくだらない考えを追い出し溜息を吐いて部屋に入り椅子に座る。


 机の上に広げられたアクセサリーを片付けながら、イヤーカフスに喜んでいた烏を思い出し笑みを零す。


 母親をはじめ周りに迷惑ばかりを掛けることしか出来ないと思っていたが、あんなに人を喜ばせることができた自分が誇らしく嬉しい。


 正確には相手は烏だが、冷えてしまっていた感情や明日が楽しみだと思える自分がまだいることを認識出来た気がして胸がポカポカと暖かくなった。

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