第42話
「とっても似合ってるよ」
「本当か?! ありがとう」
烏の足元に指輪が見えて、さっき急に好きな奴から貰ったのかなんて変な質問をしてきたことを思い出しドギマギしながら指輪から視線を逸らす。
別に深い意味もなく疑問を口にしたのだと思うが、子供みたいな夢を思い浮かべて烏に説明していた自分が恥ずかしい。
お礼を言われ烏と目が合うと静まったはずの心臓がドキドキと煩いほど鳴りはじめる。
言葉に詰まり見つめ合ったまま固まっていると、烏は小首を傾げて私の近くにゆっくりと近付いて嘴を開く。
「小陽、ちょっと顔を近づけてくれないか?」
少し緊張したような声音で烏に言われ、やはりまだ慣れない間近で見る烏の大きさに私も緊張しながら顔を近づける。
ぴょんぴょんと跳ねながら烏が近付いてきて、私の顔に大きな嘴をぬっと頬に寄せたかと思うと、そのまま嘴をピタリとくっつけた。
――えっ、烏式のお礼?
私の顔はわけも分からず火照りだしていたが、烏は何も言わずに少しすると頬から嘴を離す。
「も、もういいぞ」
「あっ、うん……」
嘴の触れていた頬を手で触りながら烏の様子をみるが、真っ黒だし表情を読み取るのは難しい。
烏は私に背を向けて机の隅に移動しようとするが、足元がおぼつかない千鳥足で数歩進んだところで尻餅をつく。
「どうしたの大丈夫?!」
「平気だ……明日も来るから窓開けとけよ」
すぐに立ち上がりぶっきら棒に言葉を返すが明らかに様子がおかしい。
お水でも飲んで休んでいけばと呼び止めようとするが、あっと言う間に翼を広げて飛び立ってしまった。
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