第40話

――なんか変な感じだな。


 理解できない自分の感情に首を捻りながら、落ち込んだような小陽に笑って欲しくて小陽の母親のことを話した。



「そう言えば小陽の伝言を聞いたとき、グズグズと泣いて小陽と同じような事を言ってたぞ。煩く言うのを我慢できないって」


「本当に? お母さん泣いてたの? やっぱり私のことでストレス溜まってるんだろうな……どうしたらいいんだろうな」



 また分からない言葉を言ってなんだか困ったような顔をして寂しく笑う小陽が不思議で首を傾げる。


 母親も小陽の気持ちが分かっていると言いながら、我慢せずに煩く意地悪をしているのを知ればこれで小陽も我慢しないだろう。



「小陽の気持ちを知ってるのに我慢しないで煩く意地悪なこと言ってるんだぞ? だから小陽だって我慢せずにもっと我侭を言えばいいだろう? 泣きたいなら泣けばいいじゃないか」



 小陽は俺の言葉に更に困ったように眉をハの字にして苦笑いを俺に向ける。



「そうだね。でもお母さんが私の気持ちをそうやって考えてくれていた事がわかっただけで嬉しいから……ありがとうカラスさん」


「なんだよそれ! 小陽だけ我慢して……それじゃなんにも変わらないじゃないか」



 釈然としない答えに俺は思わず小陽に声を荒げてしまうと、今にも泣き出しそうな顔をしているのに必死に俺に笑ってみせる。



「お母さんのそんな気持ちを聞いたら余計に言えないよ。カラスさんが心配してくれた意地悪は優しい意地悪だから大丈夫。ありがとう」



 もうこれ以上、俺が何かを言っても小陽を悲しませてしまいそうで嘴を落として何も言えなくなってしまった。

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