初めての会話

第37話

小陽の家が見えてくると、丁度その家の前に車が停まったのを見て近くの電線に留まって様子を窺う。


 車の中から小陽が下りてくるのが見え、とても急いでいる様子で扉が開くと焦ったように家に入って行く。


 元気そうな様子に一安心していると、いつの間にかベランダが開いて小陽がなんだかがっかりした様子で立っていた。


――もしかして俺の姿が無かったからかな?


 都合のいいように考えて体を揺らして笑いそっとベランダに飛んで移動する。


 小陽がどんな顔するだろうかと楽しみにしていたのだが蜥蜴の一件を思い出すとまた驚いて倒れるんじゃないかと冷や冷やしながら話しかけた。


 俺が話しかけたら目を丸くして口をパクパクさせて面白い顔をして思わず笑いそうになるのを我慢する。


 取り敢えず驚いて倒れなかった小陽に安堵して翼を軽く開いて小さく鳴いて喜んだ。


 やっと落ち着きを取り戻したのか小陽は恐る恐るだが俺に質問してきた。



「あの……カラスさんの名前を教えて欲しいな」


「名前? 烏はカラスだ。名は烏天狗になった時にもらうものだ」


「それじゃカラスさんでいいのかな……あと烏天狗ってなに?」



 首を傾げて不思議そうにしているので俺は烏天狗とはなにか、その烏天狗になる為に師匠の下で修行中のことだとかを色々と小陽に説明し、言葉を話せるようにしてもらったのを話す。

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