第33話
――紙を食べるのかよ。
嘴で筒状に丸められた紙を咥えると、我慢した文句と一緒にそのままゴクリと飲み込んだ。
「うげぇ……不味い」
「我慢しな。大天狗の社に薬草を取りに行く身にもなれってんだよ……嫌だいやだ」
「それなら俺が取ってくるよ」
「いや、駄目だ。いまの烏を大天狗に見つかるほうが面倒くさくなるからねぇ」
本来、禁じられていることをしているのだから確かに大天狗に見つかったら俺もただじゃ済まないかもしれない。
ここは右京の言葉に従ったほうがいいと、お礼を言って頷いてみせた。
小陽は俺が喋ったらどんな顔をするだろうか、病気が治ったらあのキラキラした笑顔がもっと輝くかもしれないと気持ちが高ぶる。
「デレデレしてんじゃないよ。まったく師弟揃って……これは宿命かねぇ。薬草の準備は気にしなくていいから早く行け!」
「なんだよそれ……」
宿命だのなんだと、訳の分からないことを呟く右京に問いただそうとするが、背を向けられ追い払うように手を振る。
「頼んだからな!」
右京の背中に叫んでから大きく羽ばたき、空で一回転してから小陽の家に向って飛んだ。
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