第31話
小陽と会話できるようになるのに成長が遅くなるだけなら安いもんだ。
「そんなに小陽ちゃんだっけ? 好いてるんだねぇ……一目惚れってやつかい?」
「ばっ、そんなんじゃない……」
「はいはい、ご馳走様。後ろ向いて」
カラカラと笑っている右京に背中を向けると、笑い声からなにか唱える声が聞こえ背中をポンと叩かれる。
「はい! 終わり」
「もう? 本当に?」
体を震わせ翼を開いて確かめるが、これといって変わったところも無くまたからかわれているのかと疑いの目を右京に向ける。
「あっ、疑ってるな! 師匠の偉大さを分からないなんて弟子失格だよ。早くなにか喋ってごらんよ」
「そんなこと……あっ! 凄いぞスラスラと人の言葉が話せてる!」
これで小陽と会話できるようになったと嬉しくなって右京にお礼を言うのも忘れて叫びながら空に舞い上がり飛び回る。
「凄いすごい! 練習しなくても話せる」
「お~い! 病のほうはいいのかい?」
右京の声にハッと我に返り直ぐ様、地上に戻り話を聞く体勢を整えて右京に頭を下げて話を促す。
酒を一口飲んでから目を閉じて首を左右に傾けて考えだす右京に、若干の不安はあるがこうして人の言葉を話せるようにもなったし病を治すのも大丈夫だろう。
そう言い聞かせて待っていると右京が地面に手をつき、ゆっくりとその手を上げていくと真っ黒な壺が地面から出て来る。
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