第30話
俺の願いは右京に言われた言葉を交わして病を治すことだが、まずは言葉が話せないとなにも伝えられないので言葉だけをどうにかしてもらおうと考えたのだ。
それに伴う代償が烏天狗になれないと言うことなら別の方法を考えるしかない。
そんな大きな代償を本当に払わなければならないなら右京が渋るのも納得出来る。
いくらなんでも弟子の夢を奪うような提案は最初から言ってこないだろう。
――からかってるんだよな?
相手が右京となると、どうしても不安になりもう一度確かめる。
「なあ、遅くなるだけで烏天狗にはなれるんだよな?」
「ククッ、どうだろうなぁ。本来は、禁じられていることだしねぇ……いつかはなれるんじゃない」
意地悪い笑みを浮かべながら、なんともはっきりしないことを言ってくれる。
小陽のことは驚かせてしまったこともあるし、助けてやりたい気持ちは本当だが烏天狗になれず一生を烏のまま終えるとなれば悩むのは仕方ないだろう。
――でも、いま願いを叶えずに烏天狗になってもきっと今日のことを引きずる。
不安は残るがゆっくりと右京を見てぎこちなく頷いて見せると飲んでいた酒を置き、起き上がって酒臭い溜息を吐いた。
「烏がどうしてもって言うなら仕方ない。ククッ、そんなに不安
そうな顔をしなくてもちゃんと烏天狗にはなれるよ。ただ使うのは禁呪だ。その反動で烏天狗になるのにどれほどの時が必要かは本当に俺にも分からない。いいんだな?」
真面目な顔で問われ今度こそしっかりと力強く頷いて見せると、右京の口元が緩みカラカラと笑い出す。
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