第27話
――なんで泣くんだ? 小陽の容態はそんなに悪いのか?
母親の様子に不安になってきて小さく鳴き声を上げると、母親が顔を上げて力なく微笑んだ。
「あの子ね烏の話……貴方の話をしている時、凄く楽しそうだった。病気になってからあんな笑顔を見たのはいつ以来だったか……発作を起こしてもしも小陽になにかあったらと思うと怖くて。小陽は我慢して頑張っているのに、なんでも口煩く言って……あの子の気持ちも考えず……」
小陽の具合が酷くなったのではなくて良かったと安堵したが、まだ俺の前で鼻を啜りながら涙を流している小陽の母親を、おかしく思い首を傾げて見つめる。
――小陽と同じことを言っている。
頑張っている母親には言えないと、苦笑いを浮かべて俺に話していたのを思い出す。
母親が口煩いのは自分のことを心配しているからだって小陽はちゃんと分かっていてそれに文句を言わずに我慢をしている。
――小陽の母親は我慢してないのか?
俺は人間の言葉があまり話せないから小陽に伝えたいことの半分も伝えられない。
人間同士なら言葉で気持ちを伝えるなんて簡単なことで、悪いことじゃないのに我慢するのも分からないし、優しく出来ない気持ちもよくわかない。
ただ泣いている母親に苛立ちを覚え俺は大きな声で鳴いてから、ベランダの手摺から飛び立ち天狗の山に帰った。
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