病院
第22話
まどろむ意識のなか烏の鳴き声が聞こえた気がしてゆっくりと目を開くと、そこには烏の姿ではなく心配そうな母親の顔があった。
「小陽! 大丈夫? 苦しかったり、どこか痛いところはない?」
「うん、大丈夫。それより……」
「しばらくは入院よ!」
最後まで私の言葉を聞くことなくぴしゃりと言われ、それ以上言葉を繋げる気力が失われた。
ベッドから体を起こして座り苦笑いを浮かべて母親を見やる。
――心配を掛けちゃったから仕方ないか。
最初の頃は過剰な心配に煩いと文句を言っていたが、日が経つにつれてどれほど自分の病気が周りに迷惑をかけているのか分かって文句を言うのを止めた。
父親の転勤が決まっていて、本当なら家族三人揃って引っ越しをするはずだったが、私の病気が分かり転勤先に病気を診てくれる病院が見つからず母とこちらに残ることになった。
きっと父親も仕事となれない家事を一人でこなして生活するのは不便なことも多いだろうし、母親だって病気の私が家で寝ているせいで自由気ままに買い物に出掛ける事も出来ないでいるのだ。
そんな迷惑ばかりかけている私が出来ることは、母親の言いつけを素直に聞いて文句を言わず我慢することしかない。
ただ気がかりなのは入院してしまうと折角、仲良くなりはじめた烏と会えなくなってしまうのが残念ではある。
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