修行不足
第18話
苦しそうに胸を押さえて倒れてしまった小陽を呆然として見ていると、小陽の母親らしき女が部屋に入ってきた。
きっと蜥蜴に驚いて上げた小陽の悲鳴を聞きつけて部屋に様子を見にやって来たのだろう。
ベランダで倒れて苦しむ小陽のそばにいる俺をギョッとした顔で追い払い、すぐざま駆け寄り小陽を抱きながら必死に呼びかけている。
追い払われた俺は少し離れた木の上で見守ることしかできない。
母親がなにか四角い板のようなものを取り出して話しかけたあと、けたたましい音が道路から聞こえてきた。
赤い光を灯した車がやって来て小陽を乗せるとまた走り出したので、俺もその後を追いかけて飛ぶと十字の印が描かれた大きな建物の前に車が停まる。
以前、あの十字の印を右京に教えてもらっていたので、この建物が病院という病を治してくれる場所なのだと分かった。
俺はそれ以上追いかけることも出来ず、小陽の容態も分からないまま近くの木に留まり運び込まれていった場所が見える枝の上で待つ。
空がオレンジ色に染まりはじめても小陽が建物から出てくる気配すらなく、仕方なく俺は天狗の山に戻ることにした。
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