第9話
――私のことも覚えてくれるかな? 名前とか呼んでくれないかな?
淡い期待に胸を膨らませて窓の方を向くと黒い影が空から下りてくる。
「っ!?」
思わず声を上げそうになった自分の口を慌てて抑え、ゆっくりと息を吐いてベランダの方に体を向けた。
――早朝に来た昨日のカラスさんかな?
あたふたする私をベランダの手摺りに留まって首を傾げてジッと窺い見ている。
慌てながらも驚かせないように細心の注意をはらい、机に置いたビー玉とおはじきをを手に乗せて烏に話しかけてみた。
「カラスさん。これ、助けたお礼かな? ありがとう」
『ガァ!!』
まるで話していることを理解したように鳴いて返事をする烏に、私はあのネットに絡まった烏だと確信した。
偶然にでも返事をしてもらえたことに嬉しくなって、逃げていかない烏に自己紹介をする。
「私は山木 小陽って言うの。小陽、こーはーる」
早速、覚えてもらうためにゆっくりと自分の名前を告げてみるが烏は首を傾げて不思議そうに私を見るばかりだ。
――そんな簡単に覚えてくれるはずないか。
気を取り直して椅子ごと少し窓に近付き背筋を伸ばしてゆっくりと頭を下げてお礼を伝える。
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