第10話
「また会いに来てくれてありがとう。凄く嬉しい……」
一人ぼっちで過ごすことが多い今の私にとって、たとえ会話する言葉がなくても私の存在を知ってもらえることだけでも嬉しい。
逃げる気配もなく手摺にジッと留まってこちらを見ている烏に独り言のように話しはじめる。
話し出すと日頃の鬱憤を晴らすように最近読んだ本のことテレビドラマのこと人に話しても刺激もなにもないつまらない日常のことを必死に喋っていた。
烏が言葉を分かっているのか不明だが時折、首を傾げたり相槌を打つような仕草を見せる。
調子づいた私は心臓の病気のことや、母親には決して言えないような愚痴めいた話しまでしていた。
そのうちに自分で思っている以上に心のなかには不満が蓄積されていることに気付く。
話し相手は殆ど母親だけなのだが、最近はいつも苛立ったようにピリピリしている母親に気軽に話しかけることを躊躇してしまう。
ましてや迷惑をかけて世話までしてもらっている母親に不満など言えるはずもない。
喉の乾きに咳き込み、やっと我に返ると烏の後ろにオレンジ色の空が広がりはじめていること気付いて驚愕する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます