第7話

しばし烏と私は見つめ合い立ち尽くしていると烏が下を向き、また一声鳴いて手摺から飛び去っていってしまった。


 私は緊張に止まっていた息を吐いてから窓を開けると、朝の清々し冷たい風に体を震わせ烏の去っていった空を見上げる。


 両腕を擦りながらベランダに出ようと、置いてあるサンダルを履こうと下を向くとなにやら光る物が置いてあり、しゃがみ込んで凝視する。



「ビー玉とおはじき?」



 サンダルの上に乗っていたビー玉とおはじきを手に取り首を傾げながら観察する。


 欠けてヒビが入っているが昇りはじめた太陽にかざして見るとキラキラと輝きとても綺麗だ。


――なんだろう? もしかして烏が置いていったのかな?


 昨日、庭の園芸ネットに絡まっていた烏のことを思い出し、まさかとは思ったが空を見上げて微笑む。



「そうだと嬉しいな……」



 友人が訪ねて来ることもなく、代わり映えのしない日常に烏が加わり古びたビー玉とおはじきが太陽の光に輝き温度と色を与えてくれる。



「また、遊びに来てくれたらいいのに」



 早朝のまだ冷えて淀みのない空気を吸い込んで、いつも違う一日の始まりに笑顔を浮かべてビー玉とおはじきを大切に握りしめた。

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