烏の失態

第4話

大空を打ち付けるようにバタバタと羽ばたきながら苦々しい思いを吐き出すようにガァガァと鳴き喚く。


 俺は烏天狗になるべく修行中の身なのに、不覚にも人間のあんな罠に引っ掛かってしまった。


――大失態もいいとこだ!


 こんなこと師匠の右京(うきょう)にばれたら酒の肴にされるどころか、一生馬鹿にされるだろう。


 蜥蜴を見つけ、からかって遊んでいたらいつの間にか、体に網が絡まり身動きが取れなくなってしまった。


 俺一人でもあんな網どうにでも出来たが、抜け出そうとしている途中で生白く、いかにもひ弱そうな人間の女が上から俺を見ているのに気付いてちょっと焦ったのだ。


 慌てて取ろうとすると網の穴に嘴が入るし、足にも爪に引っかかった網が絡みついてどんどん身動きが取れなくなった。


 いよいよマズイ状況になったと、がむしゃらに鳴いて転がっていると上から見ていたあの人間の女が息を切らせて立っていたのだ。


 大抵、烏は人間に嫌われていて厄介がられているので、棒でもって打ち付けられたりするのでは無いかと精一杯の威嚇をして見せた。


 だが前に立つ女は、あろうことか罠を仕掛けたくせして「助けてあげる」なんて偉そうに言うのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る