第2話
「取れた! 怪我してないかな?」
自由になった烏はピョンピョンと跳ねてすばやく移動し、少し距離を取ったところでまたジッと私の顔を見ている。
「かぁ!」
お礼のつもりなのだろうか、一声鳴くと大きな黒い翼を広げて大空に飛び立っていった。
――良かった怪我はしてなかったみたいだ。
飛んでいった烏を眺めているとリビングから私の姿を見つけた母親が驚いたように叫び、庭に出てきて私の腕を引く。
「小陽、何してるの!? なにこの庭の惨状は……まさか小陽がやったの?」
「まさか!? コホッコホッ……烏がネットに絡まっていてそれを助けたのすごく……」
咳をする私に母親は過剰なまでに反応し話の途中だったのに、目を釣り上げて掴んでいた私の腕を引っ張って家の中に押し込んだ。
「早くベッドに戻りなさい! もう、こんなに庭を散らかして。片付けなくちゃ……」
「はい……ごめんなさい」
ピリピリと苛立った母親に返事をして、もう一度烏が飛んでいった抜けるような青い空を名残惜しく見上げ溜息をついた。
ほんの数分前に軽やかに駆け下りた階段を重い足取りでゆっくりと上り、部屋に戻るとそのままベッドに倒れ込んだ。
窓の外からは母親が苛立ったように庭を片付ける音が聞こえ耳を塞ぐ。
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