一羽
出会い
第1話
ガァガァとけたたましい鳴き声が部屋に飛び込んできた。
ベッドから起き上がりベランダに出てあたりを見回すが、穏やかな青い空に白い雲が静かに流れているだけで鳴き声の主はいない。
ベランダの手摺から身を乗り出し下の庭を見ると、植木鉢やバケツが転がり酷い有様になっていた。
その中で園芸用のネットだけがモゾモゾと動き、目を凝らして見ると黒いものが絡まって藻掻いている。
「大変、烏だ! いま助けてあげるから!?」
弾かれたように部屋を飛び出し階段を駆け下りて庭に向う。
助けに出て来たはいいが間近に見る烏に手を出すのを躊躇してしまう。
――大きい。
烏は想像以上に大きく、気が立って黒く大きな嘴で威嚇する姿は恐怖すら感じ足が竦む。
それでも助けなければという使命感にかられ、落ち着かせようと声を掛けてみる。
「それ取ってあげるから大人しくして……啄いたりしないで? ねっ?」
言葉を掛けつつゆっくりと近づくとガァガァと鳴くのを止めてネットの網目から私の方をジッと窺うように見ている。
――賢い鳥だと言うし、言葉が通じたのかな?
不思議に思いながらも恐る恐る手を伸ばしネットを持ち上げるが、足と嘴がネットの穴に引っかかって容易には取れず、なるべく目を合わせないように慎重に取り除く。
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