第74話

亮太は考え込む優衣の横顔に微笑んだ。


「きっと、好きって言っていいと思う。

今、優衣ちゃんの心の中に誰かが浮かんでるでしょ?

無意識に浮かんだって事は、その人の事、他の人よりは想ってるって事になると思わない?

無意識に浮かんだ人、優衣ちゃんの中で1番の人なんだよ」


亮太の言葉に優衣は頷いた。


「優衣ちゃん、いくつ?」


「16だよ。11月が誕生日だけど・・・17歳になれるかな・・・」


優衣はうつむいた。


「なれるように頑張ろうよ」


「亮太君は?」


「僕も16だよ。すごい偶然だね」


優衣も亮太も少し嬉しそうに顔を見合わせる。


「高校は?」


「僕、勉強は苦手だから、高校には行かずにバイトしてたんだ」


「そうなんだ。でも、いいと思うよ。バイトしてるんだもん、偉いよ」


優衣は立ち上がると自動販売機の前に立ち、コーヒーのボタンを押す。


そのコーヒーを亮太に差し出した。


「ご褒美?」

冗談っぽく言い、亮太はコーヒーを受け取った。


「私からのバイト代」

優衣も冗談で返す。


2人の間に笑い声が響く。


「これからも・・・」

亮太の顔が少しだけ暗くなる。

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