第73話

「亮太君は、好きな人はいる?」


考える前に聞いてしまっていた。


優衣は慌てて話題を変えようとした。


けれど、その前に亮太から答えが返って来てしまう。


「好きな人・・・いないよ」


「いないの!」

驚いたように亮太を見る。


「どうしてそんな驚くの?

いないとおかしいかな?」


「ごめん。そう言う訳じゃないけど・・・」


「そう言う優衣ちゃんはどうなの?

好きな人いるの?」


海人が浮かぶ。

「いる・・・のかな・・・」


この感情を好きと言っていいのか分からない。


けれど、優衣の心にはいつも海人がいる。


いつも海人を想ってしまう。


それが、今の優衣の全てだ。

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