第71話

「明日からまたカウンセリングがあるね」


優衣はふと海人の事を思い出した。


「明日、先生呼ぶの?」


「うん。そのつもりでいるけど、亮太君は?」


亮太は悩みながらも「呼ぼうかな?」と答えた。


「先生に、優衣ちゃんと会った事、話してもいい?」


優衣は大きく頷き「もちろん」と嬉しそうに言う。


「ありがとう」


亮太は優衣の腕時計に気付いた。

「可愛いね」

腕時計に触れ、亮太が言う。


「ありがとう。実はこれ、今日買ったばかりなの」


「外出したの?」


「うん。着替えも取りに行きたかったし、外出の札も可愛くしたくて雑貨屋さんに行ったの。

そこでこれを見付けて衝動買いしちゃった。

可愛かったし、新しい時間って感じがして欲しくなっちゃって」


優衣の横顔に亮太が微笑む。


「亮太君も体が大丈夫なら外出した方がいいよ。

気分転換にもなるし。何か発見があるかも!」


「・・・気が向いたら行こうかな?」


優衣は頷いた。


萌といる時とは違う安心した時間が流れて行く。


会話も表情も少ないけれど、亮太との時間も楽しいと感じる。


2人にしか分からない空気が流れている。


何も言わない時間の方が多いけれど、並んで座っているだけで安心できた。


そんな風に優衣は亮太との時間を感じていた。


亮太も同じように思ってくれているのかは分からないけれど、優衣は亮太の横が気に入った。


海人とは違う好きな時間。

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