第67話

「優衣、大丈夫?」


その声に優衣の夢が終わった。


現実に引き戻され、目を開ける。


「優衣!」


名前を呼ぶ声がする方を見る。


そこには、不安そうな表情を浮かべた萌が立っていた。


「萌!」

萌は何も言わず、優衣に飛びついた。


少し肩が震えている。


「ごめんね、心配かけちゃって」

優衣は萌の背中を擦り謝った。


「先生から聞いて、心配したんだよ」

涙を拭い、「でも、思ったより元気そうで良かった」と萌は優衣から離れた。


「本当にごめんね」


「突然だったから本当に心配したんだからね!」


優衣は萌に頭を下げ「ごめん」と謝る。


「無理しないで、少しでも早く戻って来てね」


「ありがとう」


「あっ!これ、皆からのお見舞い」


萌はそう言いながら、バッグの中から透明の袋に入ったテディベアを出した。


そのテディベアには皆からのメッセージが書かれている。


「すごーい!」

優衣の目に涙が浮かんだ。


「皆で選んで、皆で買って、皆でメッセージ書いたんだよ」


「ありがとう。このまま飾っておくね」


優衣は袋に入れたままテディベアをサイドテーブルに置いた。


「喜んでもらえて良かった。

皆にも伝えておくね」

萌が嬉しそうに優衣を見る。


「ちょっと入院は長くなるけど・・・大丈夫だからね」


優衣は少し声のトーンを落とし萌に言う。


「うん、いつでも相談とか愚痴とかあったら言ってね。

待ってるから」

萌は涙を我慢しながら優衣を励ます。


本当は泣きたかったけれど、笑っている優衣の前で泣く訳にはいかないと思い我慢をした。


「ありがとう」

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