第66話

ベッドの上に置いたバッグの中から、持って来た洋服を出し、病室の棚に入れる。


まるで引っ越して来たかのようだ。


洋服を棚に入れ、バッグをロッカーにしまい、ベッドに座る。


買って来たばかりのペンのセットと外出札を机の上に置く。


「よし!」


優衣はこの外出札を飾り付けるために、新しいペンを買ったのだ。


どんなデザインにしようか、いろいろ考えながら札に描き込んで行く。


自分の名前とイルカのイラストを描き、優衣は外出札を眺めた。


「そうだ!」

優衣はもう1つ大事な物を思い出し、すぐに描きくわえる。


優衣にとって大事な物、海人とのバスを描き込んだ。

「残りは明日」


まだ完成じゃないまま、外出札とペンを引き出しにしまった。


昼食と一緒に椎名が屋上の鍵を持って来てくれた。


優衣は自分のキーケースにその鍵を付け、それも机の引き出しにしまう。


引き出しの中が少し賑やかになった。


昼食を食べ、薬を飲むと優衣はベッドに横になり、窓の外を見る。


いつも休日は何をして、何を考えて過ごしていたんだろう。


海人の事を考えてしまうのは入院した今でも変わらない。


それどころか、今の方が海人に近い。


そんな自分がふと不思議に感じられた。


「どうして・・・こんな運命になったんだろう・・・。

こうなる事を知ってて海人を好きになってたのかな?」


瞼を閉じ、優衣は夢の中に入って行った。

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