第65話

「すごい・・・」

エレベーターのドアが開き、優衣は思わず声を洩らした。


「すごいでしょ?」

椎名も自慢げに微笑む。


屋上は、雨の日でも洗濯が出来るように屋根がつけられている。


その屋根がガラス張りになっており、綺麗な青空が見える。


「すごい。こんな屋上、初めて見た」


優衣は青空を見上げ、微笑んだ。


「洗濯機はこの扉の向こうにあるのよ」


椎名はそう言うと優衣にいくつかある扉の前に立たせた。


「ドア?」

優衣はドアを見た。


ドアには鍵穴があった。


「どの場所がいい?」

椎名に言われ、優衣は咄嗟に1番左の扉を指差してしまっていた。


「分かった。後で鍵をもらって渡すわね」


「どう言う仕組みなんですか?」


「今日からこの扉の洗濯機は桜さん専用の洗濯機になります。

他の人に洗濯物が取られたり見られたりするのは嫌でしょ?

だから専用の施錠仕組みになってるの。

鍵は後で渡しますね。

扉の向こうには洗濯機と乾燥機があって、そのまま乾燥機で乾かしてもいいし、病室に持って帰って部屋に干してもいいし。

あそこにも乾かせるように物干しは置いてあるけど・・・」


椎名の目線の先に物干し竿が置かれているのが見えた。


「分かりました。あそこには見られてもいい物だけ干します」


「でも、ここの病院って本当に特殊って感じがするね」


2人で屋上を見渡し、5階へと戻る。


いつもの空気と香りに優衣は落ち着きを感じるようになった。


「後で鍵を届けますね」


優衣は「ありがとうございます」と言い、病室に戻った。

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