第62話

次の日(日曜日)


まだ海人に会えない日曜日。


優衣は朝食を食べ、薬を飲み込んだ。


少しだけ休憩をしてから、優衣は支度を始める。


バッグを持ち、何も描かれていない外出札をドアに掛け病室を出た。


病院の寝巻きを脱ぎ、運ばれた時に着ていた制服でナースセンターの前に立つ。


「桜さん!どうしたの?」

椎名が優衣の姿に駆け寄る。


優衣は少し恥ずかしそうにリボンを直し、「初めての外出してもいいですか?」と椎名に聞く。


椎名は笑顔で頷き、「もちろん、気を付けて行って来てね」と手を振る。


「ちゃんと携帯も持ってますから。

何かあったらすぐに連絡します」


「初めての外出だね。もしかして、デート?」


椎名の後ろから小原の声が聞こえた。


「先生、いたんですか!デートなんかじゃないです!

ちょっと家に帰って外出用の服とか鞄とか持って来ます。

あと、雑貨屋さんにも時間があれば寄って帰ろうと思ってます。駄目ですか?」


「いいよ。でも、体調が悪くなったらすぐに帰って来るんだよ。

病院に連絡してくれれば迎えにも行くから」


優衣は頷き、「はい。じゃあ、行って来ます」と体の向きを変える。


優衣を見送り、小原と椎名は顔を見合わす。


優衣にささやかな期待を抱いて。

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