第57話
「最後は自由に、少しでもその人らしく過ごしてもらいたいって言うのがこの病院の方針です。
ごめんなさい。何か・・・何て言えばいいのか分からなくて・・・。
気の利いた事がいつも言えないんです」
「大丈夫です。
本田さん、教えてくれてありがとうございました。
もし、他の患者さんに会ったらどうしたらいいですか?
やっぱり接しない方がいいんですかね?」
「桜さんと相手次第です。
桜さんがあまり接したくないようだったら接しなくていいし、相手が接するのが嫌そうだったら桜さんも接しないようにしてあげた方がいいと思います。
でもお互いに話をしたり、一緒にいる時間が楽しいと思えばその時間を大切にするのもいいと思います。
ただ・・・」
本田はまた言葉選びに戸惑っているように下を向いてしまう。
「いつか、どちらかが先にさよならをする日がやって来る・・・」
優衣の言葉に、本田はこくりと頷いた。
「ごめんなさい。桜さんに言わせるなんて、私、看護士として駄目ですよね」
優衣は首を振り「私なら大丈夫。気にしないで。本田さん、ありがとう。話してくれて」と本田を励ますかのように言うと、立ち上がり、「私、1階に行って来ます。ジュースが飲みたくて」とナースセンターを出た。
その背中を本田は見送った。
「本当にいい子・・・」
本田の声は優衣には聞こえなかった。
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